2013年度第2回研究会が、岩手県立大学アイーナキャンパスにて2014年3月15日(土)に開催されました.まだ雪の残るなか,会員以外も含めた大学教員や現職教員,学生の参加のもと,合計で9件の研究発表が行われました.
今回の研究会のテーマは「ICT と授業設計・学習支援/一般」であり,本テーマに関連した発表が多くなされました. ICT(タブレット端末)を活用した実践として,小学校算数の反転授業,あるいは高等学校の数学的活動に関する発表がありました.特に反転授業の発表では,先進的な取り組みとして,家庭学習で知識・技能の習得を行い,授業では活用・探究のための協働学習といった学習活動に時間を割いて授業が展開されていました.また,ICTに限らず情報活用型の授業を設計するために,インストラクショナルデザイン(ID)を踏まえた授業デザインシートを開発し改善した研究も報告されました.
さらに,メディアリテラシーをキーワードとして,メディアリテラシー学習が教員のICT活用指導力にどのような効果を与えるのかを測定した研究や,小学校においてメディアリテラシーを学ぶ新教科を開発して試行を行った研究,絵本のメディア分析モデルを構築した研究がありました.他にも,乳幼児のメディア使用に関する米国の動向,離島をフィールドにしたプロジェクト学習におけるICT活用の検討,学習スキルに関わる大学での授業実践の報告がなされました.
これら9件の発表後には全体リフレクションとして,発表者以外の会場参加者から感想や意見などをいただきました.反転授業については,ICTの活用に限らず,プリント教材等を使いながら効果的にできる方法も模索していきたいといった意見などがありました.
全体を通して,乳幼児から初等中等教育,高等教育,社会人教育(教員研修)に至るまで幅広く, ICT活用や情報活用,メディアリテラシーなどの相互に関連しながらも多岐にわたる視点からの発表があり,刺激的で充実した時間となりました.また,このような実践を効果的に行うには,授業設計(ID)の視点がより重要になってくることを再認識する機会ともなりました.参加者が多いとは言えませんでしたが,活発な質疑がなされ,研究の今後の展開にも役立つヒントが得られる有意義な場となっていたと思います.本研究会にご参加いただきました皆様に改めて御礼を申し上げます.
(文責:岩手県立大学 市川尚)
日本教育メディア学会2013年度第2回研究会のお知らせ
テーマ 「ICT と授業設計・学習支援/一般」
研究委員会 国内研究会担当 委員長 浅井和行,本企画担当 市川尚
ICT 分野の発展と,それに伴う日常生活へのICT 環境の浸透など,これまでにない急速な変化の中で,教育におけるICT 活用はますます重要になってきています。ICTを学習における道具あるいは基盤として,協働(協調)学習および個別学習の実現や,学習内容の多様な表現,思考過程の外化など,より学習を効果的・効率的・魅力的にするために活用していくことが期待されます。単なる目新しさだけの導入にとどまらず,ICTの特性を踏まえながら,どのように授業で有効活用していけばよいのか,どのように学習環境を整備していけばよいのかを考える機会としたいと思います。また,このテーマに限らず広く本学会の研究分野に関わる発表も歓迎いたします。
■ 日時:2014 年3 月15 日(土)13:00~16:00
■ 場所:岩手県立大学アイーナキャンパス(岩手県盛岡市)
(JR 盛岡駅西口より徒歩5 分 岩手県民交流情報センター「アイーナ」7 階)
■ プログラム:
・研究発表前半 13:00~14:40
1.情報活用型授業を設計する教員研修プログラムの開発
稲垣忠 (東北学院大学)
2.教員免許更新講習会におけるメディアリテラシー学習による教員のICT活用指導力向上
和田正人(東京学芸大学),田島知之(FCTメディアリテラシー研究所)
3.「メディア・コミュニケーション科」の開発と試行
浅井和行(京都教育大学)
4.小学校算数科における反転授業の導入による授業展開の変容
佐藤靖泰(富谷町立東向陽台小学校),稲垣忠(東北学院大学),高松歩未(東北学院大
学)
5.タブレット端末を活用した高等学校における数学的活動の実践
佐々木道史(岩手中学・高等学校),市川尚(岩手県立大学)
・研究発表後半 14:55~16:15
6.クリティカル分析に対応した絵本のメディア分析モデル
川島佳奈(東京学芸大学),和田正人(東京学芸大学)
7.乳幼児のメディア使用に関する米国の捉え方についての検討
~アメリカ小児科学会(American Academy of Pediatrics)の2度の声明を中心に~
森田健宏(関西外国語大学),堀田博史(園田学園女子大学),佐藤朝美(東海学院大学),
松山由美子(四天王寺大学短期大学部),中村恵(奈良佐保短期大学),松河秀哉(大阪大学),
奥林泰一郎(大阪大学),深見俊崇(島根大学)
8.「しま」体験教育プログラムにおけるICT活用の検討
井ノ上憲司(長崎県立大学),大塚一徳(長崎県立大学)
9.学びの工夫を考える初年次教育科目「スタディスキルズ」の試行
市川尚(岩手県立大学)
・全体リフレクション 16:15~16:30