2016年度第1回研究会

2016年度第1回研究会のご報告
テーマ「ICT時代の実践研究/一般」

 2016年7月17日(日)、2016年度第1回研究会が茨城大学教育学部にて開催されました.35名が参加し、14件の研究発表が行われました.
 今回の研究会は「ICT時代の実践研究」をテーマに開催されました.
 ICTの整備・普及は、地域間の差という課題を抱えながらも全国各地で進められています.次期学習指導要領においてもICT活用の推進や情報活用能力の育成の重要性が改めて指摘されているようです.また、各地で教職大学院が動きだし、これまで以上に実践と理論の往還が求められています.このようなことを鑑みて、本テーマを決定しました.
 最終的な発表件数は14件となり、2会場での開催となりました.

[A会場] 「血液型ステレオタイプにおけるメディアの影響と変容」では、血液型ステレオタイプがメディア接触の影響があるかを調査し、そのステレオタイプがメディアの影響を学習することによって変容することついて報告されました.「国語科教科書に表記のあるマッピングを活用した実践の分析(1)」では、国語科教科書に表記のあるマッピングを活用した3名の教師の実践の分析結果について報告されました.「子どもの映像記憶-日本とペルーの視聴調査の結果から-」では、日本製アニメを視聴後に子どもたちがどのように映像を記憶しているのかについて、①日本の南米系外国人学校のペルークラス,②ペルーの日系学校,③ペルーのインターナショナルスクールで実施した調査結果について報告されました.「批判的なメディアの読み解きのためのルーブリック開発」では、教師も学習者も利用できる批判的なメディアの読み解きのためのルーブリックについて提案されました.「非同期型eラーニング環境下における共調整学習の特徴の分析」では、LMS上で年齢の異なる学習者(中学生と高校生)がペアで学習を行う「共調整学習」場面での、彼らのやり取りの実態について報告されました.「小学校教師と中学校教師の授業でのメディア利用について」では、小学校と中学校の教師のメディア利用に関する調査結果をもとに、学校種によるメディア利用の類似点と相違点について報告されました.「メディア・リテラシーにおける番組制作者の役割-1996年と2015年におけるアニメ『サザエさん』の時制表現の比較-」では、1994年と2015年のアニメ各18話を分析結果について報告されました.

[B会場]「小学校国語学習者用デジタル教科書活用場面を含み込んだ対話型授業における会話分析(1)」では、学習者用デジタル教科書を効果的に活用する対話的授業における会話分析の結果について報告されました.「タブレットPCの効果的な活用に関する一考察-聴覚特別支援学校におけるICT活用事例の評価の比較から-」では、聴覚特別支援学校の中学部生徒を対象として10年間行ってきた電子黒板活用事例及びタブレットPC活用事例の中から特徴のある28事例を抽出し、その評価結果について報告されました.「算数科における家庭学習と連動したカリキュラムの検討」では、授業実践に際して作成した、家庭学習と連動したカリキュラムについての検討結果について報告されました.「タブレット端末を用いた小学校理科「土地のつくり」における理解の変容」では、タブレット端末を用いた「学校放送番組」を活用することで、どのように児童の科学的理解が変容するのかについて報告されました.「アクティブ・ラーニング型授業におけるルーブリック活用と授業内コミュニケーションに対する学生の評価-プレゼンテーション課題を例として-」では、アクティブ・ラーニング型授業で実施したプレゼンテーション課題におけるルーブリックの活用と授業内コミュニケーションに対する評価について報告されました.「小学校教員を対象とした児童のタブレット活用に関する調査」では、タブレット端末の活用に関して、使い始めから1ヶ月が経過した7月と年度末の3月の2回全教員を対象に実施した質問紙調査の結果について報告されました.「ネットワークを介して協働的に行う家庭学習の実際と児童の意識(1)-実施後約1ヶ月の実施状況と児童の意識-」では、セルラーモデルのタブレット端末を用いて、ネットワークを介して協働的に行う家庭学習実施直後(約1ヶ月)の実施状況と質問紙調査の結果について報告されました.

 全体を通して、テーマについての議論も十分になされました.質疑応答も各会場で活発に行われました.それぞれの発表内容は、今後の展開が期待されるものばかりでした.本研究会にご参加いただきました皆様に、改めて感謝申し上げます.ありがとうございました.

文責:小林祐紀(茨城大学)

2016年度第1回研究会プログラム
テーマ「ICT時代の実践研究/一般」

研究委員会 国内研究会担当 委員長 稲垣忠、本企画担当 小林祐紀

教育ICTの整備・普及は、地域間の差という課題を抱えながらも全国各地で進められています.次期学習指導要領においてもICT活用の推進や情報活用能力の育成の重要性が改めて指摘されているようです.また、各地で教職大学院が動きだし、これまで以上に実践と理論の往還が求められていると感じます.そこで、今回は、ICT時代の実践研究をテーマとした発表を募集します.その他、本学会がテーマとする内容に関する研究についての発表も募集します.
また、本会は研究委員会と企画委員会の合同開催です。午前中には教育ICTの活用やメディア教育の実践発表、実践研究論文の執筆の進め方に関する講演等を企画しています.

■日程  2016年7月17日(日)10:00-16:00(午前:実践発表・講演会、午後:研究発表)
■場所  茨城大学 水戸キャンパス
■参加費 資料代1,000円(午前だけの参加は無料)
■プログラム
 発表はA会場、B会場の2会場で同時に行います。各会場発表は13:40-16:50まで(含む休憩)、一人あたりの発表時間は質疑をあわせて24分です。

[A会場] 座長 村野井均
1.和田正人(東京学芸大学): 血液型ステレオタイプにおけるメディアの影響と変容
2.中川一史(放送大学),佐藤幸江(金沢星稜大学),村井万寿夫(金沢星稜大学),小林祐紀(茨城大学): 国語科教科書に表記のあるマッピングを活用した実践の分析(1)ー小学校3年生・説明的な文章教材「すがたをかえる大豆」実践をもとにー
3.塚本美恵子(駿河台大学): 子どもの映像記憶ー日本とペルーでの視聴調査の結果からー
4.後藤康志(新潟大学): 批判的なメディアの読み解きのためのルーブリック開発
5.荒木貴之(武蔵野大学),日野田直彦(大阪府立箕面高等学校),高木草太(大阪府立箕面高等学校),反田任(同志社中学校高等学校),齋藤玲(東北大学大学院),堀田龍也(東北大学大学院): 非同期型eラーニング環境下における共調整学習の特徴の分析
6.宇治橋祐之(NHK放送文化研究所): 小学校教師と中学校教師の授業でのメディア利用について
7.村野井均(茨城大学): メディアリテラシーにおける番組制作者の役割 1996年と2015年におけるアニメ『サザエさん』の時制表現の比較

[B会場] 座長 小林祐紀
8.佐藤幸江(金沢星稜大学),中川一史(放送大学),中橋雄(武蔵大学),青山由紀(筑波大学附属小学校),森下耕治(光村図書出版株式会社): 学習者用デジタル教科書活用場面のコミュニケーション分析
9.金子俊明(筑波大学附属聴覚特別支援学校): タブレットPCの効果的な活用に関する一考察ー聴覚特別支援学校におけるICT勝代事例の評価の比較からー
10.佐藤靖泰(富谷町立明石台小学校): 算数科における家庭学習と連動したカリキュラムの検討
11.菊地 寛(浜松市立三ヶ日西小学校),今野貴之(明星大学),中川一史(放送大学): タブレット端末を用いた小学校理科「土地のつくり」における理解の変容
12.石川勝博(常磐大学): アクティブ・ラーニング型授業におけるルーブリック活用と授業内コミュニケーションに対する学生の評価ープレゼンテーション課題を例としてー
13.稲垣 忠(東北学院大学): 小学校を対象とした児童のタブレット活用に関する調査
14.小林祐紀(茨城大学),佐藤幸江(金沢星稜大学),村井万寿夫(金沢星稜大学),中川一史(放送大学): ネットワークを介して協働的に行う家庭学習の実際と児童の意識(1)-実施後約1ヶ月の実施状況と児童の意識-

終了後:18時より懇親会(水戸駅周辺)