2012年度第2回研究会が茨城大学教育学部で12月8日に開催されました。「教育メディアのこれから」を、テーマに午前中に6件の研究発表が行われ、午後は電子教科書の講演会とシンポジウムが行われました。
午前中に行われた研究発表は、情報コミュニケーション室で行われました。この部屋は、発表者のプレゼンテーションが、最寄りの電子黒板に映し出されるように作られた部屋です。座長の石川勝博(常磐大学人間科学部)のもとで、大きく分けるとケータイ小説や電子教科書、テレビ視聴の動向というメディア系の研究と日本語教育および教師論という2つの発表が行われました。中米コスタリカからの参加もあり、活発に議論が行われました。
午後は「電子教科書の現在 -全国の教育実態をもとに-」という演目で、光村図書出版株式会社企画開発本部開発部長森下耕治氏に講演をしていただきました。佐賀県では教員採用に電子教科書が使えることが条件になり、教員養成の場でも、大学生への電子教科書・電子黒板の講習とその効果測定、大学教育における活用法やその効果を研究する必要が生じています。 森下氏は国内の自治体の取り組みの状況と電子教科書の使い方を簡単にまとめたうえで「開発者の野望」を述べ、未来の教育観を語りました。電子教科書はその性質上、児童・生徒がカスタマイズするようになり、同じものではなくなるであろうと予測されます。難しいことを学びたい子どもはたくさんの資料をインストールするでしょうし、勉強が得意でない子にはふりがな機能や音読機能が有効でしょう。英文や物語文の読み上げスピードも、その子が自分の能力に合わせて行うようになるでしょう。つまり、従来の授業は45分の中ですべての子どもが同じ内容を学ぶことを目的に組み立てられてきましたが、電子教科書が導入されれば均質的学習はありえなくなるわけです。児童・生徒が学習を構成するようになるのです。まさにメディアが教育を変える「野望」を述べていただきました。「教育メディアのこれから」という研究タイトルにピッタリな講演でした。
続いて行われたシンポジウム「電子教科書をめぐる開発者と教育現場の対話」では、村野井均(茨城大学教育学部教授)が司会を行い、小川哲哉先生(茨城大学教育学部教授)が電子教科書の講習を行ったアンケート結果から、また、中島祐子先生(水戸市ICT指導員)が現職教員に講習を行う立場から、先生たちが電子教科書に何を求めているのかを述べて討論しました。 実は、教育現場が電子教科書に求める要望は、森下氏が述べた内容とほぼ一致しており、資料・ドリルのインストールと習熟度別使用、書き込みによる個人個人の教科書づくり、オープンエンドの学習での利用、ふり返りでの使用、ポートフォリオ化などでした。 討論では、来たるべき知識基盤社会に求められる学力観との類似や電子教科書が教育観・学力観の変更をもたらす可能性、教科書検定の意味など多岐にわたって意見交換がなされました。
茨城大学教育学部 村野井均
日本教育メディア学会2012年度 第2回研究会のお知らせと発表の募集
1.開催日時:
2012年12月8日(土)10時から16時(9時半より受付)
2.開催場所:
〒310-8512 茨城県水戸市文京 2-1-1 茨城大学教育学部B棟
3.研究テーマ:教育メディアのこれから
メディアの進展は激しいため、ソーシャルメディアの普及と人間関係の変化や制作・自己表現としてのケータイ小説など研究が追いついていない状況があります。 教員養成の場でも、教室で電子黒板などを使う利点と欠点を研究するだけでなく、大学生への講習とその効果、大学教育における活用法やその効果も研究する必要があります。教育メディアのこれからを様々な形で検討したいと思います。 本研究会は研究発表と講演・シンポジウムからなります。電子教科書に関する講演を行う事で、地域の先生たちにも来ていただこうと思っています。なお研究会テーマに限らず、自由研究の発表も受け付けますので、積極的にご発表ください。
4.スケジュールと会場
10:00-12:00 研究発表 B棟202 情報コミュニケーション講義室
12:00-13:00 休憩 茨城大学生協は営業しています
13:00-15:00 講演 B棟209 講義室Ⅵ
「電子教科書の現在 -全国の教育実態をもとに-」
光村図書出版株式会社 企画開発本部開発部長 森下耕治氏
15:00-16:00 シンポジウム B棟209 講義室Ⅵ
「電子教科書をめぐる開発者と教育現場の対話」
5.研究発表者(10:00-12:00)
発表タイトル: ケータイ小説をめぐる言説の検証 ―高校生のケータイ小説利用状況から―
氏名: 芝田成輝
所属: 茨城大学 教育学部
発表タイトル: 情報化社会で求められる教員の専門的力量形成 ―新しいメディアへの対応―
氏名: 小川哲哉
所属: 茨城大学 教育学部
発表タイトル: 若者のテレビ離れに関する実証的研究の概観
氏名: 石川勝博
所属: 常磐大学人間科学部
発表タイトル: 音声認識ソフトを活用した手軽にできる日本語発音練習の試み
氏名: 小川泉 栗田るみ子 宮寺庸造
所属: 國學院大學大学院 城西大学 東京学芸大学
発表タイトル: コスタリカにおける教育メディア利用の実態
氏名: Aaron Eli Mena Araya
所属: コスタリカ大学社会科学部コミュニケーション学科
発表タイトル: 国内外で活動する日本語教師の情報リテラシー調査
Survey of Information Literacy of Japanese Language Teachers Domestic and Overseas
氏名: 加藤由香里
所属: 東京農工大学 大学教育センター
発表タイトル: メディアとしての教師
氏名: 朝倉 徹
所属: 東海大学
6.講演・シンポジウム(13:00-16:00)
(1)講演 「電子教科書の現在 -全国の教育実態をもとに-」
森下耕治 光村図書出版株式会社 企画開発本部開発部長
学びのイノベーション等国内の教育例、文科省の動向さらに海外の事例をふまえて、開発者の立場から電子教科書について語っていただきます。
(2)シンポジウム「電子教科書をめぐる開発者と教育現場の対話」
茨城大学教育学部では、今年より電子黒板・電子教科書の講習会を4回行いました。学生向けと考えていたのですが、現職教員の参加が多く、教育現場の関心の高さがうかがわれます。光村図書の電子教科書を開発した森下耕治さんに講演をしていただいた後、講習会を主催した本学の小川哲哉が、感想やアンケートに述べられていたことを紹介し、水戸市ICT指導員の中島祐子さんから講習をする立場から意見を述べたいと思います。教育の中で電子教科書をどう使うか、どのようなものであって欲しいか考えたいと思います。
登壇者
・森下耕治 光村図書出版株式会社 企画開発本部開発部長
・小川哲哉 茨城大学教育学部教授 電子教科書の講習を行ったアンケート等から
・中島祐子 水戸市総合研究所ICT指導員 現職教員に講習を行う立場から
・司会 村野井均 茨城大学教育学部教授
7.参加費:
資料代1,000円
8.懇親会のお知らせ:
研究会終了後、簡単な懇親会を予定しております。
懇親会参加費用は、約4,000円の予定です。
9.参加申し込み:
以下の項目について会場担当者までお知らせ下さい。
☆研究会に参加する
☆懇親会に参加する・しない
☆ご所属
☆お名前
☆ご住所・連絡先
10.会場担当者(発表・参加申し込み、原稿送付先):
茨城大学教育学部 村野井均 muranoi1@mx.ibaraki.ac.jp
11.発表者への連絡事項:
(1)原稿送付締め切り日:
11月16日(金)締め切り。以下の要領にしたがって、メールでお送りください。
発表申込の際に、原稿フォーマットをお送りします。
また、研究会webページよりダウンロードも可能です。
https://archive.jaems.jp/contents/kenkyukai/
(2)原稿執筆要綱:
原稿は論文集にまとめます。
○ワード形式またはpdf形式の原稿をメールで送付してください。
○B5版1行20字×40行×2段組。枚数は4枚以上の偶数枚。余白は、左右・上下=23mm
○字体は明朝体9ポイント和文と英文の表題・名前・所属、要約、キーワード(5個以内)